株式会社マックスデザイン

2024年11月05日 週刊エコノミスト 「会社の流儀」掲載

第10回ジャパン・レジリエンス・アワード「国土強靭化担当大臣賞」受賞 「瞬断」と「tsuita」で震災時の電気火災をシャットアウト

㈱エコミナミ/日本防災スキーム㈱佐藤 央 社長

2024年4月「第10回ジャバン・レジリエンス・アワード国土強靭化担当大臣賞」受賞(右が佐藤央社長・左は当時の松村祥史国土強靭化担当大臣)

 本誌「エコノミスト」は、1923年4月の創刊。その5ヵ月後の9月1日、関東大震災は発災した。以来の101年間だけでも、幾度もの巨大地震に見舞われてきた日本国土は、いわば地震大国である。政府は2011年3月11日の東日本大震災発災を契機に、2013年には「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法」を制定。翌14年から「国土強靭化基本計画」を始動している。

 その基本計画の施策の一つとして政府は、「2024年度までに住宅密集地域の50㌫に感震ブレーカーを普及させる」という具体的目標を掲げてきた。これは、地震による停電が復旧した後に起こる「通電火災」等の電気火災を防ぐための施策。1995年1月17日の阪神・淡路大震災の折の大火災の火元の約60㌫は、避難して無人となった屋内で、電気が復旧した際に転倒・破損した家電製品に通電することで起きた「通電火災」だったという検証を踏まえての施策だ。地震の揺れを感知して通電を遮断する感震ブレーカーの設置率向上で、地震直後の電気機器が原因の発火はもちろん、停電復旧後の「通電火災」も防げるわけだ。

 ところが、それにもかかわらず感震ブレーカーの普及は思うように進んでいないのが実情。その要因には「夜間の地震で通電を遮断した時、照明も消えてしまい、逆にリスクが高まる」との意見も多いほか、一般生活者にとって地震後の火災は二次的なもので、直感的には避難行動や防災備蓄のような「自分事」としては捉えにくいという側面もあるようだ。

 今年1月1日の令和6年能登半島地震の折の輪島市・朝市通りの大火災も消火活動が間に合わず、1箇所のみの火元から瞬く間に広がり、200棟以上に延焼したものだという。一人ひとりが「自分事」として捉え、1件でも多くの火災の発生を防ぐことで、大規模な延焼は防げるのだ。

 なかなか進まない感震ブレーカーの普及という課題解決に民間企業として真っ向から立ち向かっているのが、感震ブレーカー「瞬断」を開発・販売する株式会社エコミナミと、停電しても消えない電球「いつでもランプtsuita」を開発・販売する日本防災スキーム株式会社の2社だ。この2社は、お互いが協力して感震ブレーカーの普及を独自のアイデアで強力に推し進める取り組みが評価されて、24年4月の「第10回ジャパン・レジリエンス・アワード」において、今年新設された初の内閣表彰である「国土強靭化担当大臣賞」を共同受賞している。

手で握っても通電して点灯する「いつでもランプtsuita」

「感震ブレーカー」とセットで
「停電しても消えない電球」を

1987年6月の設立以来37年にわたり、太陽熱温水器の設置事業から遠赤外線温水式床暖房「ゆかだんパオ」や風の吹かない次世代エアコン「ラジアン」など、健康・環境・省エネ対応の住宅設備機器を世に送り出してきたエコミナミ。2013年9月より義父の跡を継いで経営の舵を取る佐藤央社長は、引き続き「新しい社会環境が求めるニーズに即応した商品開発へのチャレンジ」をテーマに事業を展開してきた。

 最初に取り組んだ課題が防災、中でも感震ブレーカーの開発だった。当時佐藤社長は、阪神・淡路大震災の最中に、消火活動に奔走した消防士と出会ったそうだ。そして、その消防士はこう語ったという。

「次々と起こる火災現場に駆け付けるために、瓦礫の下で助けを求める声が聞こえても消火を優先し、泣く泣く置き去りにせざるを得なかった。人を助けるために消防士になったのに、助けられなかった思いは生涯忘れることが出来ない」というのだ。

 そこで、感震ブレーカーの開発・普及に使命感を得た佐藤社長は「瞬断」のコンセプトを着想。震度5以上の地震を感知すると、振り子の原理で瞬時にブレーカーを遮断するもので、アース付きのコンセントに差し込み、アース線を接続するだけで設置が完了する、設置工事・メンテナンス不要の簡易タイプだ。

「瞬断」はコンセントに差し込んで、アース線を接続するだけで設置完了

 このコンセプトによる「瞬断」は完成直前まで漕ぎ着けたが、先に述べた感震ブレーカーの普及を妨げる課題に直面する。それならばと、「停電したら暗闇も仕方がない」という常識を覆す「停電しても消えない電球」を作ろうと発想を飛ばした佐藤社長。「瞬断」に先立って、点灯中に起こった突然の停電時に内蔵バッテリーを通電させ、明かりを灯し続けるLED照明「いつでもランプtsuita」を、試行錯誤の末2021年12月に完成させた。

停電してもこの明るさを保つ「tsuita」

 その製造・販売に当たっては、社会環境が求めるニーズの中でも特に防災に特化した製品の開発・製造・販売に専念するための新会社・日本防災スキームを22年6月に設立した。

「いつでもランプtsuita」は、普段は間接照明やダウンライトのLED照明に使って電気代を節約し、緊急時には居室の明るさを確保するバックアップ照明として威力を発揮する。口金部分を握れば通電して点灯するので、いざという時なかなか見つからない懐中電灯代わりにも使える重宝な逸品だ。

 これにより、夜間の大地震による停電でも、暗闇にならないことで心に余裕が生まれ、落ち着いて火を消すなど、危険を回避するために必要な行動が取れるようになるわけだ。

 この「tsuita」シリーズには、様々な配線設備に対応するための、天井設置型の「天照(あまてらす)tsuita」や、消えない直管型LED「ライトセーバーtsuita」等のラインナップがある。

消えない直管型LED「ライトセーバーtsuita」(左)、天井設置型「天照(あまてらす)tsuita」(右)

非日常に備えた普段からの
防災=「フェーズフリー」

「tsuita」の完成後程なく完成した感震ブレーカーは、23年度東京都の感震ブレーカー無償配布の施策に採用されるなど、既に20万個を出荷。「tsuita」も本社のある稲城市のふるさと納税返礼品に登録されるほか、各種通販番組でも人気で、累計16万個の販売実績を持つ。

 両社の代表を務める佐藤社長は、2社の目指す方向性について語る。「東日本大震災以来、『安心・安全な暮らしを守りたい』との使命感を抱き、防災商品の開発を進めてきました。『瞬断』と『tsuita』のより一層の普及で、『通電火災』の抑止に微力なりとも貢献して行きたい。併せて、日常と非日常を分けるのではなく、普段の生活をより豊かにすると共に、有事にも対応できる『フェーズフリー』の発想による商品開発を、今後も進めて行きたい」

大規模停電でも「tsuita」 を設置した家だけ明かりを灯す

【会社データ】
■株式会社エコミナミ
本社=東京都稲城市東長沼349-1
℡042-378-5222
設立=1987年6月1日
資本金=1億円(資本性ローン含む)
事業内容=健康・環境・省エネ・安全配慮の製品の開発・製造・販売等

■日本防災スキーム株式会社
本社=東京都稲城市東長沼568-11 HPビル2F
設立=2022年6月1日
資本金=300万円
事業内容=防災に配慮した製品の開発・製造・販売、講演・啓蒙活動等
https://nbss.co.jp

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編集タイアップ企画のパイオニアとして、頑張る日本の中小企業を応援しています。マスメディアでは報道されない各社の素顔と魅力をお届けします。

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