株式会社マックスデザイン

2024年09月30日 週刊エコノミスト 「会社の流儀」掲載

先端産業に欠かせない真空技術の蓄積で40余年 技術の継承と新たな挑戦で富士北麓から世界へ

コミヤマエレクトロン㈱渡邊明雄会長(左)、渡邊 伸悟 社長(右)

 山梨県南都留郡鳴沢村。富士五湖の一つ、河口湖に程近く、万葉集にも詠まれた記述のある鳴沢村に本社を置く中小モノづくり企業に、半導体・液晶・航空宇宙・医療機器など先端機器の製造に欠かせない数々の真空技術が息付いている。

 1983年12月の設立、41年目を数えるコミヤマエレクトロン株式会社だ。創業者の渡邊明雄現会長は、高校卒業後に就職した地元の電器店・コミヤマ電器㈱在職中の83年1月に、新たに社内に配管工事事業部を開設した。事業部開設当初に半導体関連工場の配管工事に携わったことを契機に、「これからは真空技術の時代だ」と直感。その年の12月には電光石火のスピードで配管工事事業部を独立させ、同社の設立に至る。

第2事業所(第7・第8工場)

 社名を「コミヤマエレクトロン」と命名したのは、出身会社への感謝の表れだ。以来、「地域社会に貢献すること」「お客様から信頼されること」「社員が働きやすい会社になること」の3つを大切に、真面目にモノづくりに取り組んできた同社は、紆余曲折はありながらも着々と成長。40周年を経た現在では信頼が信頼を呼び、主要取引先に先端分野の錚々たる大手企業や権威のある研究機関が名を連ね、産業発展に陰ながら貢献する、無くてはならない企業としての立ち位置を獲得している。

 取引先の要請に真摯に向き合い、応え続けてきた同社の強みは、「設計技術・生産技術・真空技術の融合」にある。中でも真空技術は、半導体やフラットパネルディスプレイ(FPD)、液晶、有機EL、2次電池、航空宇宙、自動車、医療、原子力等多岐にわたる分野の製造工程で、コアとなる必要不可欠な技術だ。

 同社が製造する真空装置、加速器関連機器を始めとする真空部品はいずれも一品一様。従って製造設備にも小型から大型、クリーンルームの設置など、多様な機能が求められる。その歴史は工場増設の歴史でもあった。本社工場の開設・拡張に始まり、鳴沢村の一地区の字名を冠した「ジラゴンノ第3・第4工場」、「テクニカルセンター」の開設から最先端放射線治療の医療機器製造に対応する「第7・第8工場」まで、積極果敢に設備投資を重ねてきた。

 その間積み上げ、蓄積してきた知見・経験は貴重な技術資産として、ベテラン社員から若手社員へと受け継がれ、その蓄積を土台とした新たな挑戦へと繋がって行くだろう。

(左より)Cat-CVD成膜装置、真空チャンバー、フッ素樹脂表面改質装置

100年企業に向け
次世代にバトンタッチ

(写真上)山梨県・鳴沢村の本社・工場全景
(写真下)「ジラゴンノ工場」(第3・第4工場)、テクニカルセンター

 今年5月、経営のバトンはこれまでエネルギッシュに激動の時代を切り拓いてきた渡邊明雄現会長から、次世代を担う若きニューリーダーとして、二男・一女の長男である渡邊伸悟社長に引き継がれた。

 渡邊伸悟社長は山梨大学工学部大学院を修了後、東京の半導体検査装置メーカーに入社。6年間の技術職としての勤務を経て、2006年1月に同社に参画、18年間経営幹部として勤務した後に今回の社長就任に至った気鋭の48歳だ。

 この18年間では、ベテラン社員から若手社員への技術の伝承に、パイプ役として心を砕く一方で、新しい分野への進出にもチャレンジ。トヨタ自動車から技術表彰を受けた燃料電池の製造装置の開発や、22年の医療機器製造工場「第7・第8工場」の開設はその好例で、生産台数や業務委託の拡大のほか、海外展開も視野に入れた将来有望な事業分野だ。

 医療機器製造事業開始を契機に同社は、山梨県の主導で展開する「メディカル・デバイス・コリドー構想」に県の支援を受けて参加している。これは、「県内企業が持つ優れた技術を活用して、今後成長が期待される医療機器関連分野への進出を促し、山梨県を医療機器関連産業の一大集積地に成長させよう」という構想。山梨大学医学部をも巻き込んだ行政主導ということもあり、今後大きく発展していくことだろう。

 渡邊伸悟社長は今年5月の社長就任の抱負を次のように話している。

「7歳の頃父親が独立し、その背中を見て育った私は、父親の『利他の精神で常にポジティブに振舞い、周りが賛同してくれる姿』を見習いたいと思っています。一方、100年企業に向けて、今後も地域・社会から必要とされる会社であり続けるための社内体制の整備や、より広範囲から優秀な人材を獲得できる仕組み作りを推進して行きたい。過去3回開催している『夢気球プロジェクト』も、将来世代の子供達にとって魅力的な会社になるための試みです」

「夢気球プロジェクト」で
地域活性化にも一役

2019年と23年、24年の3回にわたって、同社は栃木県の「ハッスルバルーンチーム」の協力の下、「コミヤマエレクトロン・夢気球プロジェクト」を開催してきた。地元鳴沢の小学生や保護者の方々に搭乗してもらい、上空から自分の通う小学校を見下ろす機会を設けるなど、大人になっても鮮明に記憶に残る貴重な体験を提供して、笑顔溢れる素敵なイベントになったという。

「夢気球プロジェクト」の様子

「富士山の眺望や鳴沢氷穴、河口湖など、自然資源に恵まれた故郷の鳴沢村を、東京勤務時代には自慢したものですが、今後は観光資源だけに頼るのではなく、都会へ巣立った若者達が戻ってきたいと思う生活・就業の地としても魅力的な地域作りに貢献していきたい。気球に乗った体験が地元に戻る引き金になれば」

 と、遠い将来を見据える渡邊伸悟社長は、「世界に冠たる真空技術が鳴沢村にある」と、全国各地、ひいては世界各国から技術の粋を目指す若者達が参集してくる、やがて実現したい光景を夢に描いている。

コミヤマエレクトロン株式会社
本社=山梨県南都留郡鳴沢村鳴沢2278
℡=0555-85-2844
設立=1983年12月
資本金=2000万円
従業員数=114名
事業内容=各種真空装置・真空部品・加速器関連機器・医療関連機器等の設計・製造・販売等https://www.komiyamae.co.jp

コミヤマエレクトロン株式会社/渡邊 明雄 会長、渡邊 伸悟 社長 『注目企業WEB』は株式会社マックスデザインが各分野における優良企業を独自に取材し、トップインタビュー形式でご紹介しています。

編集タイアップ企画のパイオニアとして、頑張る日本の中小企業を応援しています。マスメディアでは報道されない各社の素顔と魅力をお届けします。

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